シカロースト

 料理好きである…。料理上手とは言わない。ただ、好きなのである。

 遅くまで仕事をしてクタクタで帰宅しても、夕飯は大抵きちんと作る。夕飯をコンビニ食に頼ることは滅多にない。ちょっとばかり凝ったものや、煮もの・煮込み料理は、当夜の食事を済ませた後に概ね作っておき、翌日に仕上げるなどする。

 煮込むものやスープなどは、むしろ1日経った方が味が馴染んで美味しかったりするので、不都合はない。強いて不都合を挙げるなら、夜の11時12時でも平気で料理を始めるので、翌日の仕事中に睡魔に襲われることがある…という点ぐらいか。

 そもそも私は、レシピを見ながら作るということをほとんどせず、「こんな感じで作れば美味しい…はず!」という「方向性とカン」だけで作ることが多いので、夕飯(イコール晩酌)を終えたほろ酔い状態で臨むと、勢いがつくというか邪念が降り払えるというか、効率がよく、お味も上々に仕上がる傾向が確認されている。

 なお、経験を踏まえて念のため申し上げるが、「ほろ酔い」限定である。ほろ酔いの域を超えると、包丁で手を切る、小麦粉を床にぶちまける」などするため、調理はせぬほうがいい。

 写真1

写真1.ある晩の酒肴;中央はフグのたたき、ほかに銀杏・ホウレンソウ胡麻和え・鶏皮のカリカリ揚げ・鶏胸肉の紫蘇包み焼き・もずく酢・ぬか漬けなど。一番上に写っている酒器は、最近一番気に行っている錫の匠「能作」の作品。

写真2

写真2.当夜の酒は、わが最愛の酒、久保田の千寿。

 

 さて…。

 先日の寒波で水が出なくなった。朝の冷え込みがさほどでもなかったので、水を落とさず出勤したのが運の尽き、帰宅して水道をひねって出てきたのは、「ひょ~、ひょひょひょひょ~」という音だけ…。嗚呼、哀しき水道凍結…。

 当夜の晩ご飯は、作り置きのもので賄えた。しかし、こういう時に限って「明日はこれを調理するべっ!」とばかりに前夜のうちに冷凍庫から出しておいたシカ肉がある。あまつさえ、ムラムラと料理意欲が沸き起こるのはどうしたことか。

 むう…。

 幸い、バケツと空きペットボトルに汲み置きしておいた水が少しばかりある。洗い物は明日、水道が使えるようになってから済ますとして…、年末に美味しい赤ワインで楽しむため、やおらシカ肉のローストを作る決意を固める。いつもはオーブンで作るが、今日は、少し前にTVでチラ見して、「これはシカ肉の調理法としてグッドかも?!」と思っていた「炊飯器を使った低温真空調理法」に挑戦だぁっ!

 で、調理法は、こちら。 

 一夜冷蔵庫で寝かしてから、盛りつけたのがこちら。

写真

写真2.付け合わせを作る前に写真撮って食べちゃいました。肉だけだし暗いし、あんまり美味しくなさそうに撮れちゃった…。

 シカ肉は脂肪が少ないためか、オーブンでローストすると水気は蒸発&脂気は滴り落ちて、パサパサ感がでてしまう。

 また、中心部がきれいなピンク色…だけど火は通っている、という状態にするのが難しい。ビーフなら「ミディアムにしたかったけど、ミディアム・レアも美味しいよね…」と開き直れるのだが、シカの場合は野に生きていたものだけに、人様に「ナマでも大丈夫だからっ!」と胸を張って言えないところがあった。

 もうちょっとかな…と火入れ時間を延ばした結果、コロンコロンでカチンカチンのウェルダンになって、咀嚼というより顎を強靭にするための鍛錬…という経験も何度かした。

 その点、この調理法なら、まずもって失敗はない。加えて、密閉・低温で時間をかけて加熱することにより、肉汁を逃さず、とても柔らかくしっとり仕上がる。

 さらには洗いものがフライパン1個だけというおまけ付き。結局この日は、汲み置きの水で洗いものも済ませることができた。すんばらしい。

 炊飯器を使うがゆえに、「同時にご飯が炊けないじゃん!」というご指摘も「のん、のん、ちゃいまんがな…」だ。ご承知のように、ローストビーフというのは常温でいただく。これは、アツアツをあんな風に薄くスライスしたら、せっかくの肉汁が流れ出てしまうから。必ず冷ましてから切る、が鉄則で、その間にご飯も炊けるというわけだ。

 是非お試しください。

 ※自宅の素人料理では完全な真空にはなかなかできません。せいぜい「密閉」がいいところですが、調理に支障はありません。

                                                    

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