昨(2019)年11月の初旬、大分県別府市へ行ってきた。別府と言えば、ほぼすべての人が真っ先に温泉を思い浮かべるのではないかと思うが、温泉に浸かりに行ったわけではない。大分県には農林水産部の中に「森との共生推進室」という部署があり、そこが主導する形で立ち上げた女性ハンターの会「大分レディースハンタークラブ(以下、「OLHC」とする)」の座談会に招かれたのだ。
そもそもの始まりは、同年9月上旬。TWINの代表メールに上記「森との共生推進室」からの取材申し入れが着信したことだった。OLHCは平成28年8月設立、立ち上げから3年ほどが経過したところ。聞き取った内容を私流に要約し、主催者である行政側の意向を「歯に衣着せぬ書き方」で示すならば、「3年間は予算を組んで面倒見たけど、そろそろ自立の道を模索してもらわにゃ…」ということであるらしい(「らしい」、つまり推察です)。次年度かその次の年度は予算が打ち切られる可能性が高いので、さて、行政からの予算なしで今後どうやって活動を継続してもらうか、有害鳥獣駆除や利活用などにおける役割は今まで通り担ってもらいたいけど、大丈夫だろうか、などなど、今後の活動展開について考えたいのだと。
私としては、TWINは行政主導でできた会ではないこと、広い北海道に会員が散らばっていて、一堂に会することもままならぬ現状のほか、TWINの会員はハンターばかりではなく食に関わる人も半数近くを占めることなどをお話しし、OLHCの側にメリットになるような話は恐らくできません…と丁重に断ろうと思ったのであるが、一方でTWINの活動になんらかのヒントが得られれば…、程度に考え、旅費も補填してくださるということで応じた次第。
で、いきなりですが、行ってみての感想。
座談会自体は、まあ無難に進行。上述したような行政側の所期の目的が達成できたかはさておき、女性陣のパワーに圧倒され且つ抱腹絶倒的なシチュエーションが複数確認されたので、これはTWINの皆様にご紹介したいと思ったわけだ。
まず、レディースハンタークラブというくらいであるから、会員はすべて女性。老いも若きもいらっしゃる。大半がわな猟免許の所持者で、猟銃所持者も数名ながらいるとのこと。一方で、当日座談会のコーディネーター役は男性。平成24年度から毎年場所を変えて開催されている「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」の企画運営を手掛けてきている某株式会社の取締役。他に、環境省の鳥獣保護業務室から男性1名、大分県の職員5名ほども男性だが、1名だけ嘱託職員の女性が含まれている…という構成。
肝心のOLHCは会員20名ほどらしいが、この日は9名が参加。他に、私同様に他所から招かれた方が私以外に2名。写真をご覧いただければ、こじんまりした集まりだったというのがお分かりいただけよう。
メンバー同士、よく知る仲だからか、男性コーディネーターの話の振り方/切り込み方のせいもあるのか、女性陣からは、出るわ出るわ男性ハンターに対する辛口意見。以下にいくつかご紹介する。
獲物の角や毛皮、骨などの利用に話が及んだ時。
「男(の猟師)が作るアクセサリーは、イノシシの牙やクマの爪をそのまま皮ひもでぶら下げたとか、デザイン性が皆無なのよ。結局、獲物は男にとっては“トロフィー”なんだなって思うけど、原始人じゃあるまいし、あんなもの女は金出して買わないわぁ」とか。
言われてまじまじと眺めると、確かに、参加してくれたOLHCの女性陣のうち何人かがとても素敵なイアリングやピアス、ネックレス等を身に着けておられる。聞けばほぼ自作であるとか。男性コーディネーターがそのことに触れると、「だって、自分でこんなのが欲しいと思うから作るのよ。欲しくもないもの、作らないし、要らないわよ」と一刀両断。
料理に話が及んだ時。
「男の料理って、しょせん非日常だったり趣味だったり、生活に根差してないのよね。作るだけ作って洗い物しないしさっ」「レシピに書かれた材料を全部揃えてからでないと作れないとか、ね~。なきゃないで何とかするのが女なのっ」とか。「“だしの素”と書かれていたら、味の素だろうがヤマキだろうが、女性は今家にあるものを使うじゃない?男はね、使いかけがあるのに指定されたメーカーのものを買ってくるのよ。味の素のHPに書かれたレシピなら、味の素のだしを使うように書いてるに決まってるじゃないの。バッカねえ」とか。
挙句の果ては…。
「そんなにだしにこだわるなら、鶏ガラスープぅ?いっそ鶏を絞めるところからやれっつ~の」とか。
コーディネーター役が「男性脳と女性脳の違いが関係してますかね」みたいなことを言うと…。
「おっさんたち(中高年ハンターのこと)は、とにかく説明下手。あっちあるあれをそっちに持ってっとけ…って、どこよ、何をどこから持ってきてどこに持っていくのよ!」とか、「場所を説明するのに『こないだ誰それが落っこちたところ』って、私は“こないだ”は参加してない、っつうの!」と盛り上がり…。
徐々に居並ぶ男性陣が無口になっていく。矛先をかわそうとしたのか、コーディネーターさんが月並みな質問をする。「女性で猟に出て困ることとかありますか」
これに対し、一人のお若めのゲストの女性が「やはり用を足したくなったときですかね…」と、おずおずと言えば、OLHCの熟女のお一人が、「え~、そ~なの~?ワタシ、気にしたことな~い。」と返す。別な一人は「そうねえ、ダニは気になるけどねえ…」とフォロー。さらに別な方が「それを言うなら、男の立ちション!見えるところで立ちションするな!っつの!」一同、「そうそう、立ちション、サイテー!」
ここに至っては、役場の人(男性)は机に肘をついて両手でお口を覆っている。「今は、何も言っちゃダメだ…、黙ってろ、俺。笑うのもダメだ、口ごと、か、隠そう…」というような感じで。それを見つけた私の口は、きっと笑っていたことだろう。
しかし、コーディネーター役(男性)も負けじと言い返す。「先ほど、原始人じゃあるまいしと仰っておいででしたが、OLHCのロゴは『はじめ人間ギャートルズ』を彷彿とさせるテイストですよね…。」と口を滑らせ、女性陣のおでこに「なんですって?」的な青筋がピキッと浮かんだ…ように私には思えた。そして、このコーディネーター役の発言が「ボケ」だとすると、誰も「ツッコミ」を入れてあげることなく、彼の発言は「し~ん」という音とともに、空しく宙を浮遊して消えたのであった。
と、まあなかなか楽しかったのだが、終始「男v.s.女」という構図になってしまったのはちと残念だった、気がする。また、知床くんだりからえっちらおっちら出向いたため、スケジュールがギチギチで、結局温泉には浸かれませんでしたとさ。とほほ。
執筆者 会長・S(2020年3月17日執筆)